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BLACK WOLF
第14章 夢をみていた獲物
車内で叔母さんに聞いた真実。
黒埼さんは取り立ては一切しなかった。
お母さんはお父さんの保険金で借金を返済しようとしてたらしいけど、残されたお母さんと幼い私の今後の為に保険金すらも受け取ろうとはしなかった、と。
まだ幼かった私はそんな事実もそんな話も何も知らずに、ただお母さんに守られながら今日まで生きてきた。
「━━━━━━━。」
サッとカーテンを開けると、空は雲ひとつない青天。
清々しいほどの空を眺めながら思うのは黒埼さんの事。
黒埼さんはお父さんを助けてくれた。
お祖父ちゃんが残した会社を守ろうと、でも銀行からの融資も断られたお父さんの為に莫大な資金を融資してくれた。
私とお母さんの為にお金の取り立てすらもしなかった。
あまり接点のなかった春子叔母さんですら知ってた話。
だったら、どうして━━━━━━?
"お前は借金のカタだ"
"お前は俺が買った"
何度も何度も聞かされたあの暴言。
力ずくで何もかもを奪われ、プライドや自由も踏みにじられて、大切な幼馴染みすら失う事になった。
あんな酷い人なのに、どうして…?
私の両親を最後まで気づかってくれたのに、娘の私にはあんな酷い事をした。
黒埼さん、どうして…?
あなたは一体、何を望んでいたの…?
真っ青な空がやけに憎らしい。
窓を開けて空を仰ぎながら思うのは、そんな途方もない疑問だけだ。