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BLACK WOLF
第15章 耳をすませ、爪を研いで
職場を出た私は電車の駅に向かった。

土地勘のない場所なだけにいろんな人に道を聞きながら。

東京に住んでる癖にこの辺のこと全然知らない。

東京って本当に広い。

人が溢れ返る都会だと思えば少し離れただけで私の実家と変わらないぐらいの田舎だったり。


夜なのに、全然暗くなくて

いろんな所でいろんな灯りが溢れ返っていて目がチカチカするほど明るい。




ガタン、ガタン




電車に揺られながら窓を流れる景色。

空を突き抜けそうなほど、高くそびえ立った沢山のビル。

平日の昼間なのに人が溢れてる交差点。

私みたいな田舎者が紛れるにはこの街はゴミゴミし過ぎてる。

でも、私は確かにこの街で生きていた。

この街で生活していた。






電車に揺られ、乗り換えて

電車を降りて、そのままタクシーに乗って…。








私は、本当にバカだ。

私は今、何をしようとしてるのか。

どこへ向かっているのか。








電車もバスも通らないような山道をタクシーは進んでいく。

足場の悪い道をタクシーにガタガタ揺られながら、心臓の鼓動を必死に抑えた。

目的地に近づくたびに心臓が脈打って、今にも壊れそうだった。

「お客さん、本当にこんな山奥に用があるんですか?」

「はい。友人が住んでるんです」

「こんな山奥にですか?変わった友人さんですね~。今流行りの田舎暮らしってやつですか~?」

確かに、昼間でも鬱蒼としてるこんな山奥に用があるなんて奇妙に思われても仕方ない。

「まぁ、そんなところです」

そんな場所に家を建てるような変わり者。

この道を通るのも何だか久しぶりだ。










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