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BLACK WOLF
第15章 耳をすませ、爪を研いで

この足場の悪い道を車に揺られるのも

この生い茂る森みたいな風景も

何だか久しぶり。


もう2度と通ることもないと思ってたし、見るのも嫌だと思ってたのに。


「お客さん、着きましたよ!……立派な家ですね~」

運転手さんに言われ窓から外を見てみると、あの家があった。

運転手さんも思わず声を上げてしまうぐらいの山奥に建つ大きなお城みたいな邸。

「ありがとうございます。ここでいいです。おいくらですか?」





半月振りに見た大きなこの家。

誰も寄せ付けないほどの高く大きな門。

おとぎ話に出てくるような洋館風のデザイン。

広くて、玄関まで遠そうな庭。

昔は牢獄のように感じたこの家が今は懐かしい。







半月振りに来た、黒埼さんの邸。

そう、私は半月振りに黒埼さんの邸に戻ってきた。

連れ去られたとか脅迫されたとかじゃなく自分の意思で。





タクシーが戻るのを見届けると、私は大きな門に手をかけた。

キィッと音をたてて大きな門はあっさり私の侵入を許してしまった。

昔は高く、壁のように思えた門が今はとても小さく感じた。


門に鍵もかかってないなんて無用心ね。


門を抜け改めて見上げて見ると、本当に大きく感じる黒埼さんの家。

でも、私はここに住んでた。

今にして思えば私には不釣り合いな家だった。



この広い家に、黒埼さんはずっと1人だったんだ。

そして、今も━━━━━━。









門から長い道程を歩き、今またあのドアの前までやって来た。

…何だか、あっさりここまで来ちゃったけど、防犯カメラとか設置してないのかな?

こんなに大きな家に住んでてお金もある社長さんなんだから防犯カメラぐらいあっても不思議はないのに。




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