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BLACK WOLF
第3章 狼の牙
母親は私を育てるので必死で、寝る間も惜しんで働いてくれた。
自分の事など後回しでいつも私の事を心配してくれてた。
事情を知らない周りの親族は「山にこもった偏屈な婆さん」と母を煙たがって好き勝手に噂話をたて母から離れて行った。
ただ、母は自然に囲まれたあの山を気に入ってただけなのに。
私は父が死んだ原因すらちゃんと聞かされてないし、聞こうともしなかった。
ただの病死としか聞かされなかった。
どんな人だったのか、どんな仕事をしてたのかすら知らない。
この黒埼という人物とどんな経緯を経て借金をする事になったのかすらわからない。
本当の母を何も知らずに、今日まで生きて来たんだ…。
けれど、今言えることは…
この男は紳士でも何でもなかった。
ただの野蛮な野獣だ。
「ふ、ふざけないでっ!借金してただなんて証拠でもあるのっ!?公的な書類や借用書でもあるのっ!?」
「ほぅ。ただの田舎娘の割には威勢がいいな」
もしかしたら新手の詐欺かも知れない。
田舎から出てきたばかりの田舎娘だと思って騙そうとしてるのかも知れない。
けど、もしこの男の言うことが真実だったとしても正直、返済のアテなんかない。
父親が亡くなってから最近まで返済してたというなら額も相当なのだろう。
今は生活費と学費を稼ぐのに精一杯だし、例え大学を中退して就職したとしても大した返済額にはならないだろうし。
それよりも、この人が今やってることは間違いなく拉致監禁、立派な犯罪だ。
ここを出たらまず警察に…。
そんな事を考えていると━━━━━
「悪いけど、一介の学生が働いて返せる額じゃねぇよ?まぁ、一生働いても無理かもな」
「…だったら何で私を借金のアテに?」
「まだわかんねぇの?自分の状況」