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BLACK WOLF
第15章 耳をすませ、爪を研いで
荒々しい口調。
バラの香りすら消えてしまうほどのアルコールの香り。
それでも、引き下がるわけには行かなかった。
働いていお金を貯めてたのはここに来るため。
電車とタクシー代もバカにならないし、それに早く来ないと黒埼さんはL.Aに言ってしまう。
「教えてくれるまで帰りません!」
「てめぇ…っ!俺がどんな想いでお前を手放したと思ってるっ!?さっさと帰れ!犯されてぇのかっ!?」
「それでもいいですっ!」
「………………っ!」
弾みで口をついて出て来てしまった言葉。
黒埼さんの口調に怯んでしまい思わず出た台詞に私自身も焦ってしまったが
それでも知りたかった。
「お、叔母さんに聞きました…。お父さんの会社の事や黒埼さんが融資をしてくれたこと」
「チッ。だったら尚更何で戻ってきた!?お前を騙して弄んだ男の元になんか…っ!憎んで忘れりゃいいだろっ!」
確かにそうだ。
結局私は騙されてただけだった。
黒埼さんの話の内容は大まかに言えば嘘はなかったけど、それでも私が見てた黒埼さんの姿は嘘だった。
黒埼さんは、本当は━━━━━
「ど、どうして私に…、あんな事…。お父さんやお母さんを助けてくれたのに…ど、どうして…っ」
黒埼さんの本当の姿がわからなくなってしまった。
酷い人だと、ずっと憎んでいたのに
本当はお母さんや私を助けてくれていた。
まだ幼かった私とお母さんの生活の事を考えてお父さんの保険金すら受け取らなかった。
なのに、どうして?
灯りが差し込む室内、ソファから起き上がった黒埼さんは足早に私の元へと歩み寄り
「きゃあっ!」
私の腕を掴むと、そのまま室内へと連れ込まれてしまった。