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BLACK WOLF
第15章 耳をすませ、爪を研いで


「お前の父親は俺の中学校の担任だった。
ドラマに出てくるような熱血教師だ。
当時の俺は父の会社を継ぐだの継がないだのでしょっちゅう家で親子喧嘩してた。
で、よくある非行少年になったんだよ」


「でも、お前の父親はそんな俺をしょっちゅう叱ってくれた。
ガキの癖して万引きやカツアゲを繰り返して補導されてた俺を警察署まで迎えに来てくれたりしたよ。
誰かに本気で心配されたり叱られたのは産まれて初めてで本当に嬉しかった。
俺の親父は会社経営のことしか頭になかったし母親も親父の言いなりだったから」




黒埼さんの腕の中で私は黙って話を聞いていた。

社長という肩書きを背負った威圧感たっぷりの黒埼さんからは想像できない過去だった。

万引きやカツアゲ…、黒埼さんが会社を継ぐのを嫌がってた事。



「お前の父親のお陰で何とか立ち直って、高校に進学することが出来た。
内申書やテストの成績まで最後まで気にかけてくれてて、何とか志望校に合格した。
本当、感謝しきれねぇよ」

「高校に上がってすぐにお前の父親が教師をやめて実家の稼業を継ぐ事になったって噂で聞いた。
いい先生だっただけにショックだったよ」

「でも、"先生は自分の人生や運命を放り出さずに全うしようとしてるんだ"ってわかったから。
尊敬するようになった」

「けど、お前の父親の会社が倒産しかけてるって知って、世話になった恩師を助けたくて俺の親父に頼み込んで融資してもらったんだ。
"将来、父さんの会社を継いで守り抜いて見せる"って約束付きで。
あっさり融資してくれたよ、うちのバカ親父」


「融資は黒埼さんのお父さんが?それじゃあ…黒埼さん本人が融資してくれたんじゃ…」

「…それだと俺とお前の年齢が合わねぇだろ」


…そうだ。

お父さんは私が小さいときに亡くなってるんだし、その時に融資してもらったとしたら黒埼さんがこんなに若いはずない。









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