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BLACK WOLF
第15章 耳をすませ、爪を研いで
「あ…」

言葉が上手く出て来ない。

聞きたいことや言いたいことは他にも沢山あるのに、頭が混乱して整理出来ない。


「俺の素性を明かしたらお前が傷つく。
何も知らずに幸せに育ってきたお前に本当の事は言えなかった。
でも、ただ欲しい…って、それしかなかった…っ!
だから、あーするしかなかった…
気づいたらお前を泣かしながらもムリヤリ…っ!」



嘘…。

う、嘘だ…。

黒埼さんが私を…?

嘘だ、そんなの。

だって、私は何も知らないただの田舎娘で、黒埼さんとは住む世界が違いすぎる。






「じゃあ…っ、私をここに閉じ込めたのは…?」

「あの幼馴染みの男の元に返したくなかった。嫌われても軽蔑されてもいいから、閉じ込めてでも俺のものしたかった…。どこにも行かせたくないと━━━━━」

「ハ、ハルちゃんにあんな事をしたのは……?」

「あの幼馴染みがお前に触れたのかと思うと気が狂いそうだった…。どんな手を使ってでもあの男とお前を引き離したかった…」




「━━━━━私を誰かに譲るって話しはっ!?」

「……お前、聞いてたのか?」




抱き締めてた腕を緩め上体を起こして私の顔を見ながら優しく頬に触れた黒埼さんの手はまだ微かに震えていた。




あの日、黒埼さんの家から逃げようと決心したキッカケ。

ドア越しに聞こえた、黒埼さんが電話で誰かと話してる声。

私を誰かに譲ると笑いながらそう話してた。

楽しげに、まるで棄て駒みたいに私を━━━━。



「……あれはうちと取引をしてる会社の会長さんだ。
どこでどう漏れ伝わったかはわかんねぇけど、お前の父親の事やお前の事を嗅ぎ回ってたんだ。
お前がうちにいることも調べやがった。
あーでも言っとかないとお前への風当たりが強くなる。
どこの世界にでもいるスキャンダルをネタに足を引っ張り蹴落とそうとする下品な輩だ…」






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