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BLACK WOLF
第15章 耳をすませ、爪を研いで
…最後?
黒埼さんに会うのはこれが最後?
こんなふうに抱き締められて体温を感じるのも、混じり合ってどちらのものかわからないぐらい近くに感じる吐息も
触れるのも、声を聞くのも…全部、これで最後なんだ。
最後、その言葉を聞いた瞬間、胸がチクリと痛んだ。
大嫌いだった。
大嫌いなはずだった。
なのに、どうしてこんなにも胸が締め付けられるみたいに苦しいの?
「あぁぁっ、いやぁぁ…っ」
「もう少し…っ、我慢してろ…っ」
好き勝手に弄ばれて、詰られ、罵倒されて
1度は死ぬ気で逃げ出したのに連れ戻された。
今は、真実を確かめたくてここに来たのに、またこーして抱かれてしまってる。
何度舌を噛みきろうとしたことか…。
だけど、今は━━━━━
「あぁんっ!も、無理ぃ…イッ、イクゥ…っ」
「は…んっ━━━━っ!」
体の中で何かが弾けた、と同時に頭の中でフラッシュバックした記憶達。
よく考えて見れば、すぐにわかること。
これから1人ぼっちであのワンルームマンションに住み続けなきゃならなかった私を黒埼さんが見つけてくれた。
豪華な部屋や料理を与えてくれて、だけど真実を空かせず乱暴な言葉と態度で包み隠しながら、私のそばにいてくれた。
今になって、ハウスキーパーの酒井さんの台詞が身に染みてわかった気がした。