この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
BLACK WOLF
第16章 悲しき遠吠え
「舞ちゃん、そんなに遠慮しなくても…。ここにずっといてくれても叔母さんは構わないよ?」
…私が必死に働くのはこの家を出ていくためだと叔母さんは気づいてる。
働いて、お金を貯めて、早く格安のアパートを見つけようとしているのだと。
無理を言って叔母さんの職場に置いてもらったのだからちゃんとしなきゃいけないと
最初はそうだった。
━━━━ほんの数日前はそう思っていた。
「ねぇ、叔母さん」
「ん?何だい?」
「…いろいろごめんね。あと、ありがとう」
「なぁに言ってんだい!たかだか帰りが遅くなったぐらいで大袈裟な」
違うよ。
こんなに優しくしてくれた叔母さんに嘘をついてる。
そして、今また叔母さんに心配をかけようとしている。
ごめんね、叔母さん。
「そーやって気を使うところは母さん譲りだね。1つの事に熱中して突っ走るところは父さん譲りだし」
そう。
私はそんな2人の間に産まれた子供なの。
非行少年の更正に燃えてたお父さんと、律儀に借金を返し続けた真面目な母さん。
2人共、自分の生き方や考えを貫いていた。
だから、私も
自分で出したこのバカな答えを貫き通そうと決心した。
自分の足で歩き、この手で未来を掴もうと決心した。
その日、叔母さんより早くに目を覚ました私はある場所へと足を運んだ。
叔母さんの他にも私を心配し、黒埼さんの他にも私を守ろうとしてくれた人がいた。
私を守るために傷つきボロボロにしてしまった人。