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BLACK WOLF
第16章 悲しき遠吠え
ハルちゃんは昔からそう。
昔から私の考えてることや言いたいことを全てわかってくれてる。
今だって、きっと
私のこのバカな気持ちに気づいてる。
「逃がしてくれた?…だったら、あんな男の事はもう忘れろよ!俺は別に傷ついてもいねぇし気にしてもいねぇし━━━━」
「そうじゃなくて…っ」
ハルちゃんは私が黒埼さんの元から逃げて来たと思ってるんだ。
でも本当は黒埼さんが逃がしてくれた。
私を自由にしてくれた。
自分の気持ちを押し殺し、嘘を付いて。
私を見つめるハルちゃんの目をちゃんと見れなかった。
ハルちゃんに悪くて、こんな自分を後ろめたくて。
「ハルちゃん、私はハルちゃんの元へはいけない…」
「舞…、まさか…」
「あんな最低な人だけど、本当は…っ」
「ふざけんなっ!」
張り上げられたその声に体がビクッと硬直した。
肩を掴まれたまま、まるで私を説得するように。
「お前は騙されてんだっ!あいつはただの鬼畜だっ!お前だってあんな目に遭わされたんだぞっ!なのに、何で…っ」
うん、そうだよね。
自分でだって、何をしようとしてるのかわからなかった。
普通ならあんな人、絶対大嫌いになるはずなのに。
「舞…っ、こっち見ろよ…。頼むから…っ」
でも、あの人は…、ずっと私の事を…っ。
「ごめんね、ハルちゃん…」
私は…、最低だ。
でも、最低の人間に成り下がったとしてもこれだけは譲れない。
「謝んなよ…っ、謝られたら…っ!ちくしょ…」
歯を食い縛りながら私の肩から手を退けてくれた。
けど、その腕は小さく震えていた。
「さっさと行けよ…」
「…え?」
「顔見てたら、決心が鈍る…っ!」