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BLACK WOLF
第16章 悲しき遠吠え
振り返り私に背中を向け、私の顔を見ないようにしている。

ハルちゃんの声も肩もずっと震えてる。

ハルちゃん…。

私の大事な幼馴染み。



「私、ハルちゃんのこと、誰よりも大好きだったよ。でもごめんね。私は見つけちゃったの」



大切だと思える人。

ハルちゃんを想う感情とは別の気持ちを。



「こんな身勝手な私のそばにいてくれてありがとう…」



踵を返しハルちゃんの前から立ち去ろうとした時だった。




「舞…」

「え…?」

ハルちゃんの声がした。

さっきみたいな荒ぶった声じゃなく、かと言って震えた声でもない。

凛としたハッキリとした声で私の名前を呼んでくれた。




「俺はちゃんといるから。俺はお前の大事な"幼馴染みのハルちゃん"だから。何かあったら頼って来い。待ってるから」








ハルちゃ…?

こんな身勝手な私を許してくれるような言葉だった。

詰られて、罵られても仕方ないのに、なのに…っ。

その言葉を聞いた瞬間、鼻の奥にツンッと込み上げてくる涙を我慢出来なかった。

今、ハルちゃんの顔を見たら、涙を我慢する自信がない。



「……うん」

「しゃーねぇよ。こんな結果になってもお前に惚れてんだから」

「……う、うん」

「俺以上にお前に惚れてる男なんかいねぇからな」

「……うん、ぐすっ」

「……幸せになれよ」



ハルちゃん…。

ハルちゃん…。



「バイバイ、ハルちゃん…っ」




そう言うと、私は階段を駆け降りていた。

これ以上ハルちゃんといると、涙が溢れ続けて、言葉にならなくなりそうだったから。

私は大バカだ。

ずっと私のそばにいてくれたハルちゃんの気持ちにすら答えられなかった。

そして、今またバカな事をしようとしてるのだから。







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