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BLACK WOLF
第16章 悲しき遠吠え
空港中に響くアナウンス。
もうすぐ自分が搭乗する飛行機が到着する。
大きな荷物を持ち航空券を内ポケットに忍ばせて席を立った。
「これで、全部終わりだな…」
これで、何もかも終わる。
叶わぬ恋も、気持ちも。
遠くに離れてしまえば、気持ちもいつか消える。
遠く離れて忙しい日々に紛れてしまえば忘れられる。
あいつは、あの幼馴染みと…
同じ世界の男と幸せになればいい。
あの髪も肌も、何もかも…、あの幼馴染みのもの…。
もう2度と触れることは出来ない。
俺のものじゃない…、何もかも…、全部、あの…
一瞬、周りの雑踏が消えた気がした。
嫉妬なのか憎悪なのかわからない感情が渦巻き、視角や聴覚が狂ってしまったかのようだった。
足が、止まった。
このままL.Aに行けば、もう2度と会えない。
触れる事も、声を聞く事も出来ない。
もう…。
「結局、笑顔すら見てなかったな…」
己を奮い立たせ足を進ませようとした。
足を━━━━━━━
「黒埼さんっ!!」
━━━━━━━━━━━━━━。
ざわざわ、ざわざわ
ざわざ、わ
……………………………………………………。
周りの雑踏が、消えた。
この広い空港のターミナルで、その声だけが全ての雑踏をかき消し
鼓膜を震わすかのように届いた。
何もかもをかき消して。
「黒埼さん……、待って!」
その声は、本当に
自分にとっては救いの鐘の音のように聞こえた。