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BLACK WOLF
第16章 悲しき遠吠え








ゆっくり振り返ると、全ての物の動きがスローモーションのように見え、色褪せて

でも、そいつの姿だけはハッキリ見えた。

どんな人混みの中でも見つけられると思った。








「お前……」

「黒埼さんっ!」
















息を切らせながら辿り着いたのは他でもない。

嫌いで嫌いで、どんなに憎んだかわからない男の元。

私は本当にバカだ。

正気の沙汰じゃない。












「ど、して…、ここに…?」

夢を見てる気がした。

あの坊やに言った台詞が己に返って来たのかとすら思った。

嫉妬でおかしくなったのはこちらか?











息を切らせながら黒埼さんの元へと辿り着いた。

私は何をしようとしてるのか…。

「はぁ、はぁ…っ」

「何しに来た…?こんな男の見送りか?」

「あ、あの…」

「お前はいつも…、俺の前では泣きそうな顔だな…」






いつも憎まれ口を叩き、私をイラつかせる事しかしない人。

だけど、今は

今は、ただ━━━━━━━








「わ、私は…、あなたが嫌いでした…」

「…知ってる。それを言いに来たのか?」

「い、いつも勝手に…何でもかんでも決めて…、私の気持ちなんて無視して…っ」

「…悪かった」

「私から全部奪った…。奪っておいて今度は勝手に…い、いなくなる…」

「…これからは自由だ」






そうだよ。

これからは自由。

この人に指図される事はもうない。

だから、これからは自分の意思で決めていく。






『L.A行き517便。まもなく搭乗手続きを━━━━━』

空港に聞こえる出発の合図。

もう、これで最後。

本当の本当に最後だ。

「お前の当面の生活が困らないようにある程度の援助はするつもりだ。それで恙無く暮らせ」



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