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BLACK WOLF
第4章 その檻の中
ベッドで動けないでいる私を見ながら黒埼はニヤリと笑っているだけ。

「わかったならさっさとシャワー浴びて来い」

「…………っ」

お母さんが亡くなった時に私を支えてくれたハルちゃん。

昔からいつも私を守ってくれたハルちゃんを犠牲になんて、そんなこと出来るわけがない。

この男に従うしか道はないのだ。


シャワーを浴びようと体を起こそうとした瞬間

「痛…っ」

腕と下半身に感じる激痛。

腕は縛られた上に暴れ回したせいか縄が食い込んでいたところが微量に摩れて血が出ていた。

そして、足の隙間から見えるシーツには…、微量の血のあと。

この血も、この痛みも、全てムリヤリ奪われてしまった証だ。

腰と腕と下半身に残る痛みでスローモーションのようにしか動けないでいる私に黒埼は


「手を貸そうか?」

「いらない…」


こんなやつの手なんか借りたくない。

ズキズキと痛む体を起こし覚束ない足取りでバスルームへと向かった。

こいつに言われるまでもなくシャワーは浴びるつもりだった。

身体中に染み着いたこの男の形跡を全部洗い流すために。

絶望にうちひしがれた頭と心を洗い流すために。



私はあいつに買われた。

大切な幼馴染みを守るためとは言え、あんなやつのモノになってしまった。

何者かもわからないあんな男に、私はこれからどんなことをされるのか…。




服を脱ぎバスルームへ入りシャワーを捻り出すと、温水が冷えきった体を包み暖めていく。

一気に湯気に包まれたバスルーム。

自分の身長より高めの位置にあるシャワー、頭から一気に温水を被った。

全てを洗い流すために。

全部流れろ!流れて消えろ!


足を伝い排水溝へと流れていく血。

いつか、本当に結ばれる人にと思ってたのに、こんな最低なカタチで、愛してもない男と…っ。

これからの自分の身に起こることへの恐怖と悔しさ、あんな男を信じムリヤリ奪われてしまった屈辱、幼馴染みへの懺悔が入り交じり涙となって頬から流れ落ちる。

何もかもこのシャワーが洗い流してくれればいいのに。












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