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BLACK WOLF
第1章 黒い薔薇
「でも、確かにそうだよね。本当なら彼氏の1人や2人いてもおかしくない年頃なんだよね、私」

「いや、1人で充分だろ」

大学の授業とバイトでそんな暇なかった。

好意を寄せてくれる男性はいたけど、今は恋愛より女手一つで育ててくれた母に少しでも恩返しをしたかった。

「良くお母さんにも言われてたんだ。"早く彼氏を紹介してね"って。そんな頼まれてすぐに出来るもんじゃないのにね、彼氏って」

最初は私をからかってるつもりだろうと笑って聞き流してた内容だった。

私は母に親孝行をすることが喜びだったから。

「けどさ、お母さんいつも私に謝ってたんだよ。"苦労かけてごめんね"っ…て…」


いつも母と交わしてた会話が頭に響く。


"あんたも彼氏の1人でも作りなさいよ"

"そんなことより仕送り届いた?たまには自分へのご褒美に好きなもの買えばいいのに"



「舞…」

親孝行に必死になって、母の気持ちを汲めてなかったんじゃないか?

自分のせいで私が苦労してると思ってたんじゃないか?

どうしていつもいつも私に謝ってたの?

見上げた真っ青な空がぐにゃりと歪む。


「本当なら…、この先もっと…、結婚して孫も見せて…いっぱい親孝行を…」

「舞…もういいから…」



私はまだ中途半端だ。

まだ全然親孝行出来てない。

親孝行をしたいと思える母を持てて私は幸せだった。



「私は幸せだった…、不幸も苦労も何も感じてない…っ!」

「もういいよ、舞…」


私をあやすように、頭を撫でてくれるハルちゃんの声も微かに震えていた。

頭を撫でてくれるハルちゃんの手。

私の頭をすっぽり覆っちゃうぐらいに大きくなったんだと実感した。




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