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BLACK WOLF
第5章 真っ白な壁
「好きなものから食え」

黒埼はグラスにワインを注ぎ食事に手を付けだした。

「…食べたくない。食欲がない…」

「無理してでも食え。ここんとこいろいろあってちゃんと食ってねぇだろ」

確かにそうだ。

母が亡くなって、遠い故郷まで帰省してて、確かにバタバタして疲れてたけど

トドメを刺したのは誰でもないこの男だ。

自分でトドメを刺しておきながらよくそんな事が言えたものだ。

「それに、そんなガリガリの体、抱いても楽しめねぇし」



…やっぱり私はそーいう目的のためにここに置かれてるんだ。

でも、それでも食欲が出ない。

こんな場所で、こんな男の前で、食欲なんて出ない。

「…いらない」

「洋風料理は口に合わない、か?」

「そんなんじゃない…っ!」

あんなことされて、料理を楽しめなんて無理な話。

そんな私を無視して黒埼はワインを楽しんでるみたいだけど。



…食欲なんてない。

けど、これから私はずっとここに飼われ続けるんだ。

いつまでも食欲がないままじゃ体が保たない。

それでも、料理の香りに吐き気を覚えてしまう。


「…ったく。どこまでも強情な女だ」

そう言って黒埼は食事をする手を一旦止め席を立ちオープンキッチンの方へと歩いて行く。

…怒らせてしまったのか?

でも、本当に食欲がない。

















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