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BLACK WOLF
第5章 真っ白な壁
黒埼は私の腕の縄をほどき目隠しも外し、身も心もボロボロになった私を腕に抱えた。

こんなやつにお姫様だっこなんかされたくないけど、反抗する気力すらない。

「どこ行くの…?」

「風呂。汗だくのままじゃ風邪ひく」

…あ、お風呂か。

そうだよね、このままじゃ体が冷えて風邪をひいてしまう。

お風呂で汗も涙も唾液も…、何もかもを流さないと。


階段を下り、薄暗く長い廊下を歩き連れて来られたのは…、綺麗で広い脱衣場。

そのまま私をそこにゆっくりと下ろした。

けど、当の私はまだ上手く動けずにいた。

「どうした?脱がしてやろうか?」

「…いい」

これ以上恥の上塗りなんてしたくない。

弄ばれたせいで力が入らないだけで少しすれば動けるようになるはずだ。

その場に座り込み俯く私を面白がってるんだろうけど…。

「ちゃんとお風呂入るから、出てって」

「はいはい」

そう呟くと、黒埼は脱衣場から出て行った。

木製のドアがバタンッと閉まった瞬間、まるで糸が切れたかのように悔しさと情けなさで涙がボロボロと溢れ出して来た。

「うっ、うぅ…」



お母さん。

何で私を残して逝っちゃったの…?

私、これから先どうやって生きていけばいいの?

最低な男に買われて、好きなように扱われて、それでも逃げ出せない。


ハルちゃん。

ハルちゃんを守るためとは言え、私は何て事を…っ。

あんなやつに、体も心もボロボロにされて…

昔みたいにハルちゃんの前で頑張れる私じゃなくなっちゃったよ…。

















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