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BLACK WOLF
第6章 狼は爪を研ぎながら



広い部屋。

白い壁に、時計の秒針の進む音だけが聞こえる静かな部屋。

まるで無機質で人間味がない。

生活音とか匂いとかが全くない。



私の実家はこんなに広くなかったけど、いつもお母さんが作ってくれたお料理の香りがした。

耳を済ませばお母さんの声や近隣住民の声まで聞こえて来た。

近くにある川の音や鳥の鳴き声や風の音も聞こえた。

家中を走っても息切れ1つしなかった。



そんな暖かな家で育った私にとってこの家は

まるで死人のような家だった。

今の私にはぴったりだ。










そうしてる間にも時間は進む。

何時間もそのまま動けず絶望を味わっていると、外から車のエンジン音が聞こえた。

そして、カチャッと施錠を解除する音と共に廊下に響く誰かの足音。

誰だろう?なんて考えなくてもわかる。




━━━━ガチャ


「何やってんだ、そんなとこで」


リビングのドアを開けたのは、この家の主で私の飼い主でもある黒埼。

黒埼の問いに答える気さえない。

それもそのはず。

たった一筋見えた希望さえ打ち砕かれたのだから。

そんな私の考えを見透かしたのか、それともソファの側に転がる砕け散った植木鉢と観葉植物を見て察したのか

「言っただろ?逃げられないって。お前の為に特注したドアとガラスだ。そう簡単に壊せねぇよ?」

楽しみようにくすくすと笑ってる。





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