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BLACK WOLF
第6章 狼は爪を研ぎながら
一瞬、変な考えが頭を過った。

頭を抱えその考えを必死に払拭しようとした。


なつかしさで頭がヤラれそうなのに、その上こんな馬鹿な考えを起こして、おかしくなりそうだ…。


すると



「あと、こちらを━━━」

「え?」


酒井さんは冷蔵庫からもう1つ、ラップに包まれたお皿を私の目の前に並べた。

お皿に綺麗に盛られた、真っ赤な苺。

「和食のデザートなら餡蜜の方が宜しいかと思ったのですが、お嬢様の好物だからとの言いつけで」



ここに来て初めて口にした食べ物だった。

けど、その時は食欲がなくて仕方なく食べただけで好物って程じゃないけど

黒埼の目には美味しそうに食べてるように写ったんだろう。


「あの、お嬢様…?大丈夫ですか?ご気分でも…」


困惑する私を心配してるかのような酒井さんの口調。

…大丈夫なわけない。

黒埼の考えてることがわからない。

優しくしたり、憎まれるようなことをしたり…。


そんな私の気持ちに比例するかのように、窓から見える綺麗な夕陽が段々薄暗くなっていく。

陽が沈んで来ているのかと思ったが…



ゴロ、ゴロゴロ…

と、遠くの方から唸るような音が聞こえて来た。



「…雷?」

「あぁ。今夜から明日にかけて大変な雨になるそうです」

そうなんだ。

テレビなんて付けてないし天気予報すら見てない。

さっきまで綺麗なオレンジの夕陽が窓から射し込んでたのに。

酒井さんは窓のカーテンをサッと閉めた。

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