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第7章 獣のような目で

酒井さんの話を聞いてると私の知ってる黒埼とは全く違う人物像が浮かぶ。

私も黒埼に会ってまだ2日ぐらいで日は浅いが

私の知ってる黒埼が本当？

酒井さんが騙されてるだけ？

酒井さんが見てる黒埼が本当なの？


「あの、お嬢様？本当に大丈夫ですか？お薬でもお持ちしましょうか？」

「い、いえ…、大丈夫、です…」


考え込みすぎて頭が痛い。

頭の中で考えが絡まって上手くほどけない。

俯いたまま黒埼 明という人間のことを思い出していた。

私をムリヤリ抱いたあの男の事を…。


そんな私の思いを掻き消すように窓を殴るように降り続ける豪雨。

…そういえば、このハウスキーパー酒井さんは何時までここにいるんだろう？

隣町に住んでるって言ってたけど、この雨の中ちゃんと帰れるのかな？

車で来てるならまだ安心だけど、もし電車やバスを使ってるなら、こんな雨の中を駅まで歩くのかな？

雷がおさまるまでって言ってたけど、雨は止みそうもないし、雷がおさまるのを待ってたら終電も無くなるかも知れない。

「酒井さん、ここまで何で通ってるんですか？」

「はい。電車を使わせて頂いてます。1度乗り換えますが…」

「あの、この雨の中、どうやって帰るんですか？」

「ここから駅まで歩いて、それから電車で…」

歩いてって、こんな雨の中を…？

この山道を下っても、最寄り駅まで結構な距離はありそうなのに。

「でも、こんな豪雨の中を…？」

心配する私をキョトンと見つめる酒井さん。そして━━━━

「くすくす…」

まるで何かを思い出したかのように口に手を当ててくすくすと笑っている。

「あの…？」

私、何か変なこと言ったかな…？

「あ、失礼しました。旦那様から聞かされてた通りの方だったので」