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BLACK WOLF
第7章 獣のような目で

盗み聞きするつもりなんてなかった。
ただ、話し声が耳に入って来ただけだった。
「安心して下さい。例の娘はちゃんと家にいます」
え…?
例の娘…?
遠くで再び雷鳴が聞こえた。
「はい。はい、そうです。相沢の借金のカタに連れて来たあの娘です。はは、使い道はいろいろ考えてはいますけど」
足が動かない。
相沢って、私の名字だ。
相沢の借金、家に連れてきた娘。
私の話をしてるんだ。
足が震える。
心臓が凍りついたみたいに冷たい。
ドクンッ、ドクンッ
ダメ…。
聞いちゃダメ、こんな話…。
「あははっ!情なんて移りませんよ、あんな田舎娘に!まぁ、そのうちどこかにお譲りしますよ!」
ザァザァと激しさを増す雨。
近くで響く雷鳴。
その場から凍りついたように動けなくなってしまった。
いや、全身が凍えたように酷く寒い。

