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BLACK WOLF
第7章 獣のような目で

酒井さんは嘘つきだ。
いや、黒埼が酒井さんに本性を見せてないだけだ。
こんな男が…
人を物みたいにムリヤリ奪い、物みたいに誰かに簡単に譲るなんて笑いながら言う人が
優しいわけない…っ!
凍った体から流れ出た一筋の涙。
席を切ったかのように涙がボロボロと溢れだした。
雨音と雷鳴のお陰で、廊下を走る音も、小さな嗚咽も黒埼に聞かれずに済んだ。
部屋に戻りドアを閉めると共にその場に崩れ落ちるように座り込んだ。
私は、あの男が言うように本当にバカだ。
優しそうなハウスキーパーの話を真に受けて、実は優しい人なんじゃないかと少しでも思ってしまった。
私の全てを奪い、幼馴染みを盾に私を脅迫してここに監禁した。
監禁したのをいいことに私の体をも弄んだ。
そして、今度は私を誰かに譲る話…。
私の人生、私の気持ちなんて、あの人にしてみれば取るに足らない小さなもの。
優しくなんかないっ!
私を大切に思ってるなんて有り得ないっ!
こんなことならあの時、酒井さんに全てを打ち明けて逃げればよかった。
「━━━━━━━っ!」
もう迷わない。
もう騙されたりしない。
私は━━━━━━━━
心に決めてた小さな決意。
あの男の思うように生きるなんて絶対に嫌だ。

