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煮詰めたシチュー
第5章 雑記 恋がつくるモノ
手のひらを見ると、髪の毛よりも細いしわがくっきりと見えました。爪の表面のスジやら指先のガサつきなど、今まで見えなかったものがつぶさに見えるようになると、これはもうあちこち観察したくなります。
あれこれと焦点を合わせてまわりましたが、パソコンのキーボードなんかは埃だらけで、よくまぁこんなものを触っていたなと思いますし、イチゴの表面なんてあの粒々がみんなこっちを視てるようで寒心に堪えないものがありました。
見えなかったものが見えるというのは、見たくないものも見えてしまうわけで、私の場合どちらかというとショッキングな発見が多かったのです。
老眼鏡でこれですから世に顕微鏡が登場した当時の学者さんは、悪魔も身をすくめるような微生物の蠢きにさぞや背筋を冷たくしたことだろうと思います。