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煮詰めたシチュー
第5章 雑記 恋がつくるモノ
   
ある日、思い切って奥さんの住む他県の町まで行きました。
住所は知りません。最寄の駅だけは以前に聞いていたので、とにかくそこまで行くことにしました。
そこに行けば奥さんと同じ空気が吸えるような気がする。
それがその時私にできた精一杯のことでした。

何の変哲もない郊外の静かな町。
そこには奥さんが普段使いにしてそうなスーパーや銀行やクリーニング屋があって、そんな町の日常に奥さんの存在を感じ取ることができました。
   
奥さんも歩いたであろうアスファルトを同じように踏みしめて歩きました。
淡く都合のいい期待が湧いてきます。
もしかしたらぱったり出会うかもしれない。会うならぱったりがいい。
プライドだけは人一倍高かったですから、その時に備えて驚いた顔を練習したりしました。



   
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