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煮詰めたシチュー
第10章 雑記 哀しい病
   
犬を跳ねた運転手が携帯電話を耳にあてて車から降りてきました。
この男性はチラッと犬に目をやったあと、自分の車を先に点検し始めました。
私はたまたま事故の瞬間に居合わせただけの無関係な人間ですが、その男性に得体の知れない憤りを感じました。

その怒りのようなものが動力となって、やっと私は男の子のそばにいくことができました。
間近に見る男の子の肩は震えていて、固く握り込んだ小さな拳は親指の付け根まで真っ赤になっていました。

大切なものを喪った少年の哀しみ。
それが私の体にいくつも突き刺さるようでした。



   
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