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煮詰めたシチュー
第10章 雑記 哀しい病
妻には、諦めと究極の打算があったようでした。
妻は私の症状に気付き始めたとき、心中を考えたそうです。
ただ、妻と年老いた母以外に身寄りのない私の弔いができるのは、自分だけしかいないと思い、心中は諦めたんだそうです。
そしてもし私が先に逝くようなことがあれば、私の四十九日の法要を済ませて、すぐに後を追うつもりだったと、笑いながら告白してくれました。
ほら、と妻がしたためた遺書を見せられたときは言葉を失いました。
『お前は大丈夫だったのか?』と聞くと、『うつにはいつでもなれたけど、あなたが先になってくれたおかげで、私はうつになってられなかったのよ』と、もっともな返事が返ってきました。
世話をかけたなと思っています。