この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
あの店に彼がいるそうです
第8章 一体なんの冗談だ
 篠田は椅子に座り、黒いファイルを取り出した。
 一枚の資料に目を落とす。
 真っ白い紙面を埋め尽くす文字と、二人の人物の写真。
 煙草をくわえ、頭痛を押さえる。
 見知った顔と、知りたくなかった顔。
「本当に……面倒なことになってきたな、この街は」
 低い呟きは誰にも届くことはなかった。

「ようこそシエラへ、お姫様」
 出迎えの空気がいつもと少しだけ違う。
 それは勿論、昨日までいなかった人物への興味からだろう。
 更に、その男が来ているスーツの所為もあるだろう。
 白。
 全員が一瞬にして理解した。
 篠田のスーツだと。
 ホストクラブは店によって決まりがある。
 最近聞いた話だが、キャッスルが青や黒系を主流にする一方、シエラはどちらかといえば赤や金をアクセントにしたスーツが多い。
 白はチーフだけが着る色なのだ。
 それから、ネクタイの有無。
 入った当時から目についていたが、シエラのホストはネクタイがない。
 スーツもそれの不在による空間を逆に生かしたデザインが多い。
 松園我円率いるスフィンクスでは全員黒ネクタイに、金のタイピンがマストらしい。
 あそこは集団意識が強く、髪型にもこだわっている。
 シエラはアカを除いて黒髪が多いが、向こうは松園親子の白髪に合わせ、全員青のラインを入れた白髪か銀髪だ。
 全員並ばせたら圧巻だろう。
 香水の香りも我円以外は統一。
 だから、町ですれ違うだけでスフィンクスの人間だとわかるらしい。
 類沢にそう言われたとき、なんてお洒落な派閥意識だと怯んだ記憶がある。
 キャッスルとシャドウはどちらも№に入った者のみがネクタイを許される。
 面白い。
 本当に店によってルールは様々だ。
 忍は向こうでどう働くんだろう。

「あっ、そうそう」
 肩を寄せて囁く。
「瑞希ってピアス空けてる?」
「俺? ないけど」
「さっき篠田さんに聞いたんだけどさ、シエラって全員左耳にピアスしてるらしいんだよ。で、確かにしてんのな」
「ずっとキョロキョロしてた理由はそれか」
 言いつつ、俺も周りを確認する。
 確かに、一夜も三嗣も左に付けている。
 今まで気づきもしなかった。
「拓は?」
「両耳空いてる」
 ほら、と掻き上げるとリング型のピアスが二つ。
/342ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ