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あの店に彼がいるそうです
第10章 最悪の褒め言葉です
「用は済んだから帰ろうか。朝は忘れてたけど今日は休みだし昼を食べに行っても良い」
 助手席に乗り込み、俺は隣に座る類沢をじっと見つめる。
 腕時計を確認した彼が「どうする?」と目を向けた。
 その蒼い眼が不審げに傾く。
 ビクッとした。
「瑞希」
「な、んですか」
 嫌な汗が背中を伝う。
 類沢は手を伸ばして俺のシャツの襟を掴んでぐいっと引き寄せた。
 微妙に首が絞まって顔を歪める。
 だが類沢の眼になにも言えなかった。
 迫力。
 そんな言葉じゃ形容しきれない。
 呑み込まれそうな気迫。
 十秒と目を合わせられないだろう。
 低い声で尋ねられた質問に更に鳥肌が立った。
「誰と会ってたの?」
「えっ」
「僕はその種の香水は家においてない」
 多分、そのとき俺はアホ面してただろう。
「……わかるんですか」
「他人の家の香りに人の鼻は敏感なんだよ。それと同じで……で、この短い間に誰と会ってたのかな?」
 彼女の浮気を問い詰めるような、そんな言い回しと責められている後ろめたさに萎縮する。
「あと……」
 襟を離した手が頭に向かってきたので思わずぎゅっと目を瞑った。
 だが、優しく髪をなぞっただけだった。
「髪。ぼさぼさなんだけど」
「あ。掻きむしったから……」
 その理由を思い出して口をつぐむ。
 さっきまでの非現実みたいな現実。
 鵜亥と名乗ったあの男の話があの冷たい声と共に頭の中を渦巻く。
「まあ、いいけど。僕だってここが誰の家か秘密にしてる訳だし」
 意外にあっさり類沢は身を離して車を発進させた。
「そう言えば、なにがあったんですか」
「ちょっと説教されてきた」
「は? 類沢さんが?」
「買い被るね。僕だって叱られるよ?」
「いや……全く想像つかないっていうか」
 軽い口調だから冗談にしか聞こえないし。
 類沢は何かを思い出すように遠くを見据えて息を吐いた。
「そうだね。僕を叱ってくれる人はそう多くない。初めは姉さんで……」
 ふっと。
 風が吹いた気がした。
 車内なのに。
 類沢は今口にした一言を消すように微笑むと、スピードを上げた。
「たまにはラーメン食べようか」
 俺を一瞬見て、同意を受けとる。
「美味しい所があるんだ」
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