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散る華如く
第5章 新たな出逢いたち
「―をな・・・」

「しをな、どうしたの・・・?」

ぼうっ、と物思いにふけっていた彼女に、瑠恵が声をかける。

「ぁ・・・ごめんなさい、お母様。何でもないの。」

(今、一瞬だけ・・・知らない女のひとが見えた・・・?)

「何でもないって顔色ではないでしょう。」

「本当に・・・大丈夫だから。」

「仕事は終わったし、行ってくるね・・・お母様。」

「しをな、待ちなさい―。」

彼女は母の制止も聞かず、行ってしまった。

誰もいない部屋で、彼女は言った。

「―あの子はもう、思い出しかけているのね・・・」

瑠恵はふっ、と苦い笑みを浮かべ、仕事に戻った。

***

「おや。久しいですね・・・しをなさん。」

いろはは穏やかに微笑み、しをなを迎えてくれた。

「そうですか・・・?」

「さあ。ときわが待っていますから・・・」

そう言って、いろはは彼女を部屋へ案内しようとした。

「そこに居るのは・・・ときわのお嬢か?」

ふいに、男に呼び止められる。

「高尾・・・!!“お嬢”とは失礼な・・・」

いろはがそう言っても、高尾と呼ばれたその男は鼻を鳴らして笑うだけ。

「こんな別嬪な女・・・ときわにはもったいないだろう?」

いつの間にか肩を抱かれていて、しをなは困り顔で軽く睨む。

「わ、わたしはそんな・・・」

「高尾!お客さまを困らせるものではありませんよ。」

「いいじゃねぇか、俺はこのお嬢に興味を持ってるだけだ・・・」

彼はしをなの腕を掴んで、強引に私室へと引っ張って行く。

「や、やめ―。」
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