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藤の舞
第12章 飢えと渇き
部屋に入り、まず、奥さんを抱き締める。

「会いたかった…」

「イヤッ、やめてください。」

奥さんの香りが鼻腔に届いたところで拒絶される。

「すみません、ボクはあなたとゆっくり話がしたかったんです。
何もしませんから、こちらへ掛けてください。」

余りに簡素で目的重視のその部屋には、部屋いっぱいのベッドしかなかった。

ボクが先にベッドに座ると、奥さんが離れて座る。

「こんな風に、病院以外で特定の人と会うなんて、嫌なんです。」

「奥さん、あそこに行ってたら、先生の元にいたら、大変なことになります。
今すぐ辞めてください。」

「そんなこと、わかってます。
あなた方が何処から現れて、どうして私を知ってるのかわかりませんが、
知りたくもありません。

あなたは私をどうしたいのですか?」

「ご主人の元に帰ってください。
もし、ご主人が気に入らないなら、ボクが…

奥さんのことが好きです。
奥さんはあそこで沢山の男に弄ばれるような女性じゃないんです。

もし、足りないなら、ボクがお相手しますから…」

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