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変態王子の献身
第2章 リッツシュタイン家の城下町
それにしても、ツォーハイム家との間に何が起こったのだろう。マリアの言っていた「火事」と関わりあるのだろうか。リーナは最近起こった事件についてあまり聞かされていなかった。マリアに尋ねても、浮かない顔をして話を逸らされただけだった。何か、よほど悪いことが起こったのだろうか。しかし、戦争開始ほどのことだったら、さすがにリーナの耳にも届くだろうし、そこまで重大なことではないだろうと思っていた。

次のシュルツ先生の授業の日に、打ち合わせてあったようにシュルツ先生は風邪のために休講という伝令を城に送ってきた。それを聞いたマリアとリーナは喜び、早速打ち合わせどおりに街娘の服に着替えて出かけた。城を出るときはいつも、頭に料理人がかぶるような頭巾を被って城を出る。そうすることで、門番などに気づかれずにすんでいるのだ。

「リーナ、きっとこれからしばらくは外に出にくくなると思うけど、いいの?ラルフは例のヨハンを連れてカフェに来ていると思うけど、一度会って恋に落ちてそれからしばらく会えなくなったら、むしろ辛くなるんじゃないかな?」
と、マリアは寂しそうに尋ねた。

「分かってるけど、私は街人みたいにデートしたり、恋人と一つのケーキを分け合って食べたりしたいだけなの。町人の読んでる恋愛小説にあるみたいに。
マリア達みたいにちゃんとお付き合いしようなんて考えてないの。でも、普通なデートなんて、堅苦しいどこかの王子様とはできないでしょ?私はただ今日一日最後に町人としての人生を謳歌したいのよ。」


「分かった、分かった。じゃあ、行きましょうか、プリンセス。でも、あんたもヨハンのこと気に入るか分かんないじゃない。」

「それはそうだけど。そうしたら諦めるから。私のパパはたぶん、私をドーリンゲンの王子と結婚させたいんだと思う。私って一人っ子だし、国益を考えたら、きっとあそこのフィリップ王子と結婚するのかなって思うの。先週もまたフィリップ王子うちに来ていたし。城の中でも噂になってるでしょ。」

「えー!でも、フィリップ王子って結構デブじゃない?それに服のセンスとか最悪だし」

確かに、フィリップ王子は垢抜けない見た目だった。しかし、リーナはフィリップ王子のことを嫌いではなかった。



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