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Withdrawal Symptoms
第2章 秘密の関係
"好きでこうなった訳じゃない"
以前、彼は私にそう言っていた。初めてを奪われたのは高2の夏。その頃私には彼氏と呼べる人がいた。だけど……“あの日”すべてを彼に奪われてから、その実情は変わってしまった。彼氏の俊哉(しゅんや)との電話を終え、いつも通り……そう何時も通り、私はお風呂に入り、リビングでアイスを食べていた。そう、ここまでは本当に何ら変わらない何時もの“夜”だった。半袖に短パン。今思えばこの格好がいけなかったのかもしれない。
……だけどさあ、誰が考える? この後まさか兄に行為を強要されるなんて。
私はあの時の事を思い出し、目頭が熱くなるのを感じた。
(……うん、でもやっぱり私が悪かったんだ。あんな格好で兄とは言え、兄とは言え……)
唇を噛み、下を向きながら通学路を歩く。その時、背後で声がした。私は後ろを振り返った。
「おっはよー」
そう言いバシッと私の肩を軽く叩く。振り向きざまに受けたその衝撃に、若干姿勢を崩した。
「麻実(あみ)〜。もうビックリさせないでよ」
苦笑いを浮かべ彼女を見る。
彼女は"あはっ"と小さな、可愛らしい声を漏らした。
麻実は中学からの私の友人。まあ、悪く言えば腐れ縁……、みたいなそんな感じだ。当時偏差値も大分違った私達は、高校はさすがに離れるだろうと思っていた。だが結局、彼女、麻実の努力の甲斐あってか見事私と同じ清蘭(せいらん)高校への合格を果たした。彼女は所謂"天才ちゃん"なのである。天然にして奇才と言う呼名を持つ彼女には噂が絶えない。……いや色んな意味で。
「麻実は毎日元気だよね〜。うらやましいよ、その元気少しでも分けて欲しい」
そう呆れ声で言えば彼女はプクッと頬を膨らませた。
「あ、あたしだって何時もこうなわけじゃないもんっ」
「え〜。じゃ何? “誰にも言えない”悩みとかがあったりしてぇ?」
冗談。冗談半分でそう訊いただけだった。
ーーだけど……麻実はそれには答えず、ただ黙って大きな瞳を揺らすだけだった。
以前、彼は私にそう言っていた。初めてを奪われたのは高2の夏。その頃私には彼氏と呼べる人がいた。だけど……“あの日”すべてを彼に奪われてから、その実情は変わってしまった。彼氏の俊哉(しゅんや)との電話を終え、いつも通り……そう何時も通り、私はお風呂に入り、リビングでアイスを食べていた。そう、ここまでは本当に何ら変わらない何時もの“夜”だった。半袖に短パン。今思えばこの格好がいけなかったのかもしれない。
……だけどさあ、誰が考える? この後まさか兄に行為を強要されるなんて。
私はあの時の事を思い出し、目頭が熱くなるのを感じた。
(……うん、でもやっぱり私が悪かったんだ。あんな格好で兄とは言え、兄とは言え……)
唇を噛み、下を向きながら通学路を歩く。その時、背後で声がした。私は後ろを振り返った。
「おっはよー」
そう言いバシッと私の肩を軽く叩く。振り向きざまに受けたその衝撃に、若干姿勢を崩した。
「麻実(あみ)〜。もうビックリさせないでよ」
苦笑いを浮かべ彼女を見る。
彼女は"あはっ"と小さな、可愛らしい声を漏らした。
麻実は中学からの私の友人。まあ、悪く言えば腐れ縁……、みたいなそんな感じだ。当時偏差値も大分違った私達は、高校はさすがに離れるだろうと思っていた。だが結局、彼女、麻実の努力の甲斐あってか見事私と同じ清蘭(せいらん)高校への合格を果たした。彼女は所謂"天才ちゃん"なのである。天然にして奇才と言う呼名を持つ彼女には噂が絶えない。……いや色んな意味で。
「麻実は毎日元気だよね〜。うらやましいよ、その元気少しでも分けて欲しい」
そう呆れ声で言えば彼女はプクッと頬を膨らませた。
「あ、あたしだって何時もこうなわけじゃないもんっ」
「え〜。じゃ何? “誰にも言えない”悩みとかがあったりしてぇ?」
冗談。冗談半分でそう訊いただけだった。
ーーだけど……麻実はそれには答えず、ただ黙って大きな瞳を揺らすだけだった。