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やさしいんだね
第2章 情熱は二種類
 信号待ちにぶち当たり、小百合は顔を上げた。
 そしてふと考えて、ソンの横顔に視線を向けた。

「ねぇ、処女っていくらだっけ?」
「ホテル代込みで中1は50万。中2は30万。中3は15万。高校生ならツラによる。小6なら100万かな」

 話すことを禁じられていたソンだが、小百合の問いかけには即座に反応する。金の亡者だからこそ出来るワザだと小百合はいつも思う。

「ふぅん。でもそれってマエの値段だよね?」

 小百合の言葉にソンは急に小百合のほうを向き直り、細い目の上にある太い眉毛を片方だけ上げてみせた。

「なに?後ろはいくらかって聞きてぇの?」
「別にそういうわけじゃ」
「ほおー。小百合はいくら欲しい?」
「え?」
「言い値でいいよ。ちゃーんと規則通り俺に相談したんだ、お前の欲しい額言ってみな」

 信号が変わっても、小百合の視線は膝の上で握り締めたプリントには落ちず、前方を走る車の時折点滅するライトに向けられていた。

「おーい?小百合様ぁ?」

 ソンの笑いが混じった問いかけに小百合は首を振り、座席に深くもたれ掛かった。

「いくらでもいい」
「へぇ?そりゃ一体どういう風の吹き回しで?10万だって20万だって、小百合にゾッコンの色黒さんならポンッて出すと思うぜ。いい稼ぎ時だと思うけどぉ?」
「別にいくらでもいいの」
「いいのって小百合ぃ、まったく・・・。それじゃあ俺が勝手に決めるぜ」
「ソンならいくらにする?」
「そうだな・・・最低でも8万だな」
「8万か・・・」
「なんだ?不服か?じゃあ10ま、」
「違う!高すぎるんじゃないかなって」
「は?」
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