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やさしいんだね
第2章 情熱は二種類
「そうそう、さっきの子は延長になったから別の奴が迎えに行くことになったよ。小百合、さっき帰りが一緒になるんじゃないかってえらく心配してたろ。ご安心を。このまま真っ直ぐどこにも寄らずに塾まで送るからさ」

 ソンは鼻歌混じりに小百合に言った。
 しかしそれは、小百合の耳をかすりもしない話題であった。

「たぶん今回限りで辞めちまうだろうけど、処女の13歳だったからなぁ。いやぁ、いい金になったよ」
「ねぇ、ちょっと黙ってくれる?」

 窓の外を通り過ぎる街灯が小百合の手に握られたプリントに赤やオレンジ色の影を落とす。
 ソンの無神経なダミ声は小百合の苛立ちを掻き立てる一方であり、ソンはソンで気を悪くすることもなく「あーっ、これはこれはどうもすみません!」と明るく詫びると、その後は一言も口を利かなかった。

 ソンは小百合を送り迎えする際、気を使ってラジオも音楽もかけない。
 というより、そもそも経営者のソン自ら運転して送り迎えするなんて、先程のような新人を除いてはソンお抱えの少女の中でも小百合と、あともう1人、小百合と同じく中学2年生の千夏という子だけであった。
 最も、千夏は先月ソンの元から去ってしまった、というよりソンが望んでそうしたために、現在は必然的に小百合のみがソンのVIP待遇を受けているということになる。

 今年42歳になるというソンが自分より二回りも年下の中学生にここまで気を遣う理由はただひとつ。

 小百合が1時間で10万円稼いでくる稼ぎ頭だから、ということだけだ。
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