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やさしいんだね
第3章 教師は何も
 薄い灰色のブレザーの大群の中では、紺色のセーラー服は目立ちすぎる。
 慣れない教室の、一番奥ドア横の席で俯きながら、小百合は手帳を開き、ハートマークとともに18時とピンク色のペンで記入されてある26日の欄を指でなぞった。


 小百合の母親が再婚したのは、小百合が松浦と神谷に抱かれた日の翌々日だった。


 たった5回しかデートしたことのない、若いトラック運転手。
 それが小百合の新しい父親であった。
 新居とは名ばかりの今にも崩壊しそうな文化住宅は小百合が住んだことのない街にあった。
 しかし、ソンのワンボックスが送迎に来れる距離だったし、今までどおり塾にも通える距離だった。

 ゴンダ。
 苗字のインパクトおかげであとに続く名前をクラスメイトが覚えて、そしてその名前で呼んでくる可能性は極めて低いだろうと小百合は思っている。

 その前に、クラスメイトに苗字すら覚てえもらえず、またどこか違う街に引っ越す可能性の方が高いと思ったからだ。

 なぜかというと、再婚して2日後に、新しい父親は早速母親を2発も殴ったから。

 大丈夫、生まれてから8回も苗字が変わっているから、引越しと転校には慣れている。と、小百合は自分に言い聞かせる。

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