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泡のように
第15章 14.
 思えばあの日。
 
 私とお兄ちゃんが終わった日。

 一緒にお兄ちゃんの後輩の試合を観に行ったんだっけ。
 手を繋いで。

 でも試合なんて私は見てなかった。
 そもそもルールが全然わからないし。
 いや、たぶんお兄ちゃんは何百回も私に教えたんだろうけど、エービーシーの順番すらきちんと覚えられない子なんだから、無駄な苦労だったはずだ。
 だから、私は、試合観戦を楽しむお兄ちゃんの横顔だけを見てた。
 お兄ちゃんと手を繋いでいられることだけを楽しんでいた。

 その晩、私たちの関係が終わるなんて、想像もせずに。


 そうだ、あの晩。

 お兄ちゃんは私を抱かなかった。

 布団の上で、私が初潮を迎えた日のお母さんみたいに、私を正座させて。

 そして、言ったんだ。

「もう終わりにしよう」

 と。

 ちょうどその時部屋のテレビがついたままで。
 画面には、欧陽菲菲がマイクを握っている姿が写っていた。

「きりがないから」

 そう言ったお兄ちゃんのセリフは確実に、テレビで耳にした歌詞のぱくりだったに違いない。
 
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