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泡のように
第17章 16.
 点滴の匂いと消毒液の匂いが沈黙を包む。
 13階の窓ガラスから見える空は灰色の雲が一面にどんよりと重くかかっていた。

「あんたを妊娠してた時ね、つわりが酷かったのよ」

 鼻をグズグズ鳴らしながら、お母さんは唐突に話を切り出した。

「お母さんね、実の子供が欲しいと思ったことなんて一度もなかったわ。実の子じゃなくたって、お母さんには可愛い篤志がいたから。でも、篤志がどうしてもキョウダイが欲しいって言って聞かないから、健児さんと相談して、それであんたが出来たのよ。篤志はほんとは、弟が欲しかったのよ。ほら、下の階に住んでた篤志の同級生のユウ君とこが3人兄弟だったじゃない。きっとあの子、羨ましかったんだわ。女の子だって分かったとき、よっぽど堕ろそうかと思ったわ。だってあの子、なんだぁ女かーって心底残念そうに言ったのよ。健児さんは篤志をきつく叱ったけど、私は叱れなかった。だって篤志が私の気持ちを代弁してくれたんだから、褒めたいくらいで。お母さんね、妊娠中ずっとつわりが酷くてあんたを生むまで食事がろくに喉を通らなくて15キロも痩せたのよ。なに?よかったじゃんって?失礼な子ね。お母さん昔はスリムだったのよ。服のサイズ15号だったのよ信じられないでしょ。え?じゅうぶんデブだって?うるさいわね。欲しくもなかった子供なのに、こんな辛い思いしたくないって、妊娠中から、現在に至るまで、ずっと思ってたわよ。でも今日ほどね、あんたを生まなきゃよかったって、思ったことはないわ」

 深い溜息をついたのも、やっぱりお母さんじゃなくて、覗きのおばさんだった。

「さっきの話だけど、先生ってあんた、それは、あんたの通う高校の?」
「そうだよ。お母さんも知ってるでしょ?1年の時、私があんまりにも成績が悪いってお母さんを学校に呼びつけた、あの」
「まさか、あの全日本プロレスにいそうな江國香織の?」

 ニヤッと笑って頷いてみせる。
 ついにお母さんは私から視線を外してしまった。そして他人の青姦現場を目撃してしまったような表情で身震いしながら言った。

「・・・吐きそうなのは、お母さんだって同じよ」
「そっかぁ。そうだよね。私も人のこと言えないね」

 バカみたいな感想を、述べる。
 事実、バカなんだけど。

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