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泡のように
第26章 25.
 髪を伸ばし始めたのは、先生と付き合いだしてからだから、もう3年目になる。
 それまでも鎖骨が出るほど短くしたことはなかったけれど、長いほうが好きだって言った先生の趣味に律儀に合わせて伸ばしに伸ばして、現在は余裕で髪ブラ出来る長さ。

 一度も染髪したことのない真っ黒い私の髪を、アキホは「キモチイイネー」と言いながら、何度も無意味に撫でてくれた。


 アキホの店は、レイナのマンションから5分ほど歩いたところにある繁華街の奥の、風俗店が入るようなビルがいっぱい立ち並ぶ路地の、その更に奥にあった。

「セーラー服に黒髪ってサイコーだね。こんな滑らかな髪の毛に触ったの何年ぶりかなぁ。おまえ一体どういうつもりで切っちまうっていうんだよ、こんなキモチイイ髪をさ」

 どでかい鏡には、地味な女子高生と、その女子高生の長い髪をひたすら弄くり回す、肩にけったいなタトゥを入れた端正な顔立ちの女が写っている。

「シャンプー代とドライヤー代の節約のためです」

 ある意味素直に答えた私を、アキホはやっぱり高笑いした。

「おまえも篤志と似てケチだなー。どうする?シャンプーもしとく?それか、篤志みたいに金がもったいねぇつって、切るだけにしとく?」

 シャンプーがいくらかにもよるけど、と思ったけれど、モップ犬と同じにされてはさすがに女としてどうか、というプライドもあり「あ・・・いえ、シャンプーしてください。トリートメントも」と答えた。
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