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泡のように
第27章 26.
「じゃあパパが家まで送ってあげたら?」

 レイナは何の迷いもなく言った。
 マジかよほんとにメロンしか食えなかったよ腹減ったし、とか思っている間にもその人は「それもそうだな」と言って、ぴかぴかのキッチンのピカピカの冷蔵庫に直行して、中からウィダーインゼリーを取り出すと、瞬時に吸い込んでしまった。
 こいつらには人に気を利かすという能力が備わっていないのだろうか?
 グーグー鳴り続ける私の惨めな空腹事情に気付く様子もなく、レイナはふふふと笑いながら私に耳打ちした。

「パパったらね、こんなに可愛い子と2人っきりでドライブできるもんだから、張り切っちゃってるみたい」

 などと、私の空腹には微塵にも気付く様子もなく。

 その人は着替えもせず、半袖シャツと夏用スーツの下を履いたまま、車の鍵と煙草だけ持って私を玄関に手招きした。
 別れ際、レイナは当たり前のように「また今度ね」と笑顔で私をハグして、お兄ちゃんにしたみたいに額にチュッとキスをしてくれた。
 おっぱいはやっぱり、思いっきりかじってやりたいくらい、フカフカだった。

 
 レイナたちの部屋を出て廊下を抜け、階段を下りて駐車場へ向かう。
 道中ずっと無言で。
 おじさんの車は8人乗りの黒いワンボックスだった。
 促されるままドアを開けて助手席へ乗り込むと、先生の車と同様に、車内は煙草の臭いが充満していた。

「ごめんね、臭いよねぇ。いつも嫁に怒られるんだけど、こればっかりはやめられなくて」

 そう言いつつ、おじさんは無香料のファブリーズを車内全体にスプレーしていた。
 
「いえ、彼氏が喫煙者なんで、べつに慣れてます」

 車が発進してから率直な感想を述べると、おじさんは驚いていた。

「彼氏いるんだ」
「まぁ、はい」
「おとなのひと?」
「まぁ、そうですね」
「げぇ、未成年に手を出すなんてけしからん奴だな」

 反応からして、この人は自分のがよっぽどけしからんことをしてるはずなのに、社会的な常識という概念はある程度持ち合わせている人間であるらしかった。

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