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泡のように
第27章 26.
「最初に付き合った人のことが、どうしようもなく好きなんです。私のこと初めて抱いた人だから。でも、今付き合ってる人は、こんな私を受け入れてくれる人なんです。今まで親とか色々あったんで、誰かに愛されたくて仕方なくて。色々あって今の彼氏のこと騙してたみたいな感じなのに、ずっと好きでいてくれるんです。だから、失いたくないんです」


 何を言ってんだろう。
 言ってから、後悔した。
 団地まで車で1時間以上かかるのに、出だしからこんな暗い話題とか終わってる。
 それでも、どうしても、話を聞いて欲しかったのだから、髪型と同じで、後悔しても遅いんだけど。


「そっかぁ」

 おじさんは聞いているのかいないのか分からないぐらいの関心で、相槌を打つ。

「ごめんなさい、急に、こんな話をしちゃって」

 冷静になって謝罪すると、おじさんは案外あっけらかんと笑った。

「別にいいよ。おっちゃんもね、こういう話慣れてるから。恋愛経験なんて全然ないのになぁ、なんでだろうな、こういう相談事よくされるんだ。生徒に」

 思わずその人の横顔を見つめると、おじさんはお兄ちゃんと同じ彫りの深い顔をニッコリさせて、私に言った。

「意外だろ?俺ね、こう見えて、中学校の先生なんだよ。篤志とキャラ被ってるだろ」

 呆気に取られる私の顔を、お兄ちゃんと同じ瞳の色のおじさんは、しばらく笑って見つめていた。

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