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泡のように
第31章 30.
 山岸のおっさんが団地を出て行ったのは、10月に入ってからだった。
 それは奇しくも、中間テスト開始の前日。
 つまり、昨日のこと。
 
 母さん、明日は仕事休むって。
 昨日の晩、おっさんが出て行ったあとの家の片付けを手伝いを終えたお兄ちゃんは、どこか清々しい顔で、そう言っていた。


 風邪で高熱を出したって、自転車で転んで骨にヒビが入ったって、インフルエンザに感染したって、どんな状況だって、お母さんは私のために年休を使うことはなかった。
 私が知る限り、お母さんが年休を使用したのは今まででたった1回だけ。

 まだ5人だった頃の東方神起のツアー最終日のドーム公演に参戦するためだ。

 お父さんの死とか、今回の入院療養は別として、それほどまでに仕事熱心だったお母さんが、年休を使うなんて。
 それほどまでにあのおっさんのことを愛していたんだと知り、私はある意味関心してしまった。

 
 最も、彼らが別れたのは、私が原因みたいなもんなんだけど。






 それは、先月の月経開始日に遡る。
 お兄ちゃんはおっさんと話をしただけだと言ったが、幼い頃から体育会系社会特有の厳しい上下関係の中で育ったお兄ちゃんにとってそれは制裁を意味したのか、実のところ山岸のおっさんを執拗に殴りつけたらしい。

 さすがのお兄ちゃんも私ごときのために人生を棒に振るのは御免だと理性が働いたのか、刺し殺すことまではしなかった。
 けれど、40キロ以上体重差のある男にコテンパンにやられた山岸のおっさんは、ある意味で刺し殺されるよりも致命的な傷を心身ともに負ったに違いない。

 あの晩、仕事終わりに同僚と飲み歩いたのちTSUTAYAでJYJのDVDをレンタルしてルンタルン気分でタクシーでリッチに帰宅したお母さんが、取り乱して私たちの部屋のチャイムを鳴らし立てたのは、ちょうど私たちが布団の中で抱き合って熟睡していた時分だった。

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