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泡のように
第32章 31.
 科学の進歩はスゲェな。
 
 いつの日か先生が私に呟いた言葉を、私はゲロ臭がまだどことなく残るトイレの中で1人、呟いた。

 妊娠検査薬は1本800円程度。
 おしっこを引っ掛けて、約1分待つだけ。
 インスタントラーメンの完成を待つより早く、命はリトマス試験紙に反応するらしい。


 最も?
 よほど生命力が強いと予測される我が子に於いては、おしっこを引っ掛けている時点で、くっきりと陽性反応を示したけれど。








 お兄ちゃんの動画を見てすぐ、服を着て、家を出て、原付を無免許で飛ばしてドラッグストアへ向かった。

 そして、試した妊娠検査薬に陽性反応が出たことを確認してから、再び無免許で原付を飛ばし、掛かり付けの産婦人科に飛び込んだ。

 午前の診療にギリギリ間に合い、主治医の唖然とした顔を見つめたあとで、膣の中に指とか器具とか棒みたいなのとか突っ込まれて、最終的に棒を突っ込まれたままグリグリされまくったのち、腹の中の子はようやく私の前のモニターに姿を表した。


 真っ黒い、ちっさい、ゴマみたいな点。


 それが、私の腹の中で細胞分裂を始めている我が子だと言われても、正直ピンと来なかった。



 主治医は慣れきった様子で「手術はですね」と言い出し、たくさんの書類を私の前に差し出した。
 思わず笑ってしまった。
 確かに過去の行いが悪かったとは言えそりゃないぜ、と。
 だから私は堂々と言った。

「先生、私、この子生みます」と。

 14歳の時から避妊目的でピルを服用するために通っていた女が、唐突に妊娠し、即座に出産を決めた姿を目の当たりにして、年配で見るからに頭の固そうな主治医は、何を考えたのだろう。


 会計で1万3千円と言われ、情けなくも手持ちが足りなかった私は会計係の若い女性事務員に「あとで払いに来ますのですみません」と100回くらい頭を下げたあと、エコー写真を手土産に産婦人科をあとにした。

 その時たまたま隣にいた高齢出産と思われる臨月近い妊婦が、私の手にエコー写真が握られているのを見て明らかに驚愕していた。

「なにかと大変だろうけど、中学だけはがんばって卒業するのよ」

 と後ろから老婆心丸出しで声を掛けられたけど

「あのぅこう見えて私高校生なんです」

 と答える余裕はさすがになかった。

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