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泡のように
第32章 31.
 産院を出てすぐ、原付を1時間30分も走らせた。

 隣市は財政難に喘ぐ工業地域で、基本的に田んぼか工場しかないところ。

 だから、朽ち果てる寸前としか言い様のない、老朽化の進んだ黄土色の校舎が、田んぼのど真ん中にぽつんと佇んでいる姿は、これといって何も不思議ではなかった。 
 まるで漂流教室のような、おどろおどろしい校舎を見上げたとき。
 職場すらも陰気だなと、思わず笑ってしまった。



 お兄ちゃんの勤務先所在地は、産院で会計を待つあいだにグーグルアースで調べた。
 校門前に適当に原付を止めて、開きっぱなしになっていた赤茶色く錆びた鉄製の門から中に入る。
 タイミング悪くすでに昼休みが終わったらしい校内は、どこからともなくザワザワと生徒たちの声が聞こえてくるものの、正体はどこにも見えなかった。 
 だから、下駄箱の前で彼らの姿を見つけたときはむしろ喜びの念を抱いたくらいだった。

 薄いグレーの襞スカートと、白いブラウスに同色のセーター。
 そして金髪。
 
 どっからどう見たって「悪そうですね」としか形容出来ない女子生徒のグループが、どっからどう見たって中学生にしか見えないショートカット頭の私を、腕を組んで睨むように見つめている。
 腹の中に命を宿したせいか、今更中学生程度の不良少女にビビる必要性はない。
 だから私はスーパーサイヤ人になった気分で彼女らに笑顔を向けた。

「こんにちはぁ。あのぅ、職員室ってどこですかね」

 彼女らは黙ったまま一斉に下駄箱の奥に存在する両開きのガラス戸を指や顎で差した。

「わぁー、助かりますすんませんありがとうございます」

 私は彼女らに自分の方が年上であるにも関わらずペコペコと頭を下げ、そしてふと考え、再度彼女らに尋ねた。

「ちなみに八田先生っていま職員室にいますかね?」

 彼女らは訝しげに仲間同士で視線を重ね合い、すぐに、

「うちのクラスいま体育だから、グラウンドじゃね」

 と頷き合いつつ、私に答えた。
 お前らはじゃあ何してんだ、と素朴な疑問を抱いたりしたが、今は関係のないことだ。
 彼女らに礼を言い、すぐにグラウンドに向かった。

 

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