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泡のように
第6章 5.
「別に身体をどう利用されようがどうだっていいんです。ただ、愛して欲しいっていうか、こういうの、キリストのアレ的には変ですかね」
 
 日曜の夕方、閑散としたミスタードーナツ店内。注文はいつもポンデリング1個とカフェオレ。カフェオレはおかわり自由だから経済的だ。

 目の前の若い綺麗で地味な女性は深刻な顔で私の話を聞いている。彼女はお兄ちゃんと同い年の27歳、佐伯さんって人で、キリスト教系の新興宗教の信者さんだ。

 本当は神様とかキリストとか全然興味ないし宗教の人とドーナツかじりながら話をするとか時間と金の無駄だろって頭の片隅では分かってるんだけど、佐伯さんが布教のためにウチを尋ねてきたときからなんでも黙って私の話を聞いてくれるもんで、ついつい毎週こうやって会ってしまっている。

 佐伯さんは話を聞き終わると、いつもメルヘンなピンク色のカバーがかかった分厚い聖書を取り出し、中に書かれた神様からのためになる言葉を読みながらなにか私にアドバイスをくれる。ハッキリ言って佐伯さんは処女、ちなみに結婚するまで処女童貞でいなきゃいけない宗教らしい、だからだと思うんだが全く持って検討違いというか、理想論にすぎないよね、的なアドバイスだ。

 でも、それはそれで嬉しい。役に立つか立たないかは別として、いてくれるだけで嬉しい存在だ。佐伯さんは。
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