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泡のように
第32章 31.
静寂が薄暗闇を包む。
冷蔵庫の音と、上の階から聞こえてくる囁きのようなテレビの音声。
鳴らないスマホと、そして。
「・・・ごめん。兄ちゃん、もし、智恵子の腹の中にいるのが、あの変態とか、山岸のおっさんとか、そいつらの子供で、俺の子供じゃなかったらって考えたら、なんか色々意地悪言って、智恵子を困らせたくなったんだ。ごめん」
お兄ちゃんの逞しい腕が、私を包み込む。
「ほんとはね、今日智恵子が学校に来てくれて、う、嬉しかった。子供がデキたって分かって、嬉しかった。でも、俺、こんな男だから不安になって、ごめん。母さんのことも、智恵子を無視したかったわけじゃなくて、でも、嫌な思いさせて、ごめん。智恵子のこと、好きで好きで、たまらないんだよ」
ばりばりに渇いた太陽の匂いがするお兄ちゃんのTシャツ。
じんわり心に染み込んでいく、言葉。
お兄ちゃんの震える肩に、私も腕をかける。
お兄ちゃんの唇が、私の耳に触れる。
息が熱い。
息が、重い。
ねぇ、お兄ちゃん。
私ね。
ほんとはね。
「・・・・こういう説明で、理解出来た?」
もう、自分が惨めでたまらないよ。
「・・・ねぇ智恵子?智恵子は俺がこんな男だって分かっても、それでも、兄ちゃんのことが好きなんだろ?だって、前に言ったもんな?智恵子は俺から逃げないって。俺の本性を見ても、逃げないって。その口で、確かに、俺に、言ったもんな?だから、その証明として、俺の子を孕んでくれたんだろ?兄ちゃんは、嬉しいよ。これで、ずっとお前と離れないでいられる、理由が出来たもんな?」
お願いだから、もう、そんなに笑わないで。
お願いだから。
私を笑わないで。
冷蔵庫の音と、上の階から聞こえてくる囁きのようなテレビの音声。
鳴らないスマホと、そして。
「・・・ごめん。兄ちゃん、もし、智恵子の腹の中にいるのが、あの変態とか、山岸のおっさんとか、そいつらの子供で、俺の子供じゃなかったらって考えたら、なんか色々意地悪言って、智恵子を困らせたくなったんだ。ごめん」
お兄ちゃんの逞しい腕が、私を包み込む。
「ほんとはね、今日智恵子が学校に来てくれて、う、嬉しかった。子供がデキたって分かって、嬉しかった。でも、俺、こんな男だから不安になって、ごめん。母さんのことも、智恵子を無視したかったわけじゃなくて、でも、嫌な思いさせて、ごめん。智恵子のこと、好きで好きで、たまらないんだよ」
ばりばりに渇いた太陽の匂いがするお兄ちゃんのTシャツ。
じんわり心に染み込んでいく、言葉。
お兄ちゃんの震える肩に、私も腕をかける。
お兄ちゃんの唇が、私の耳に触れる。
息が熱い。
息が、重い。
ねぇ、お兄ちゃん。
私ね。
ほんとはね。
「・・・・こういう説明で、理解出来た?」
もう、自分が惨めでたまらないよ。
「・・・ねぇ智恵子?智恵子は俺がこんな男だって分かっても、それでも、兄ちゃんのことが好きなんだろ?だって、前に言ったもんな?智恵子は俺から逃げないって。俺の本性を見ても、逃げないって。その口で、確かに、俺に、言ったもんな?だから、その証明として、俺の子を孕んでくれたんだろ?兄ちゃんは、嬉しいよ。これで、ずっとお前と離れないでいられる、理由が出来たもんな?」
お願いだから、もう、そんなに笑わないで。
お願いだから。
私を笑わないで。