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泡のように
第7章 6.
 学期末テストで全教科再追試だったのは学年で私一人だけだったと聞いた時は、さすがにヤバいな、と思った。

 第一職員室の一番奥窓際、きちんと整理整頓された机の前で険しい表情を浮かべ頭を抱えている秋芳先生は、やはりきちんと整理整頓されたアパートのベッドの上で貪欲に私の体を貪る男の面影もなく、ダメすぎる生徒の行く末を案じる真面目な教師の顔をしていた。

「山岸~、再追試でも合格点取れてねぇぞ~、このままじゃ3年生になれないぞ~」

 はい、ごもっともです・・・。
 頭を垂れ自分の答案を見つめる。
 38点。うーん、惜しい。
 と思ってしまうからたぶん私は勉強が出来ないんだろう。

「再再追試なんて俺、この学校来て初めてだぞ。数学とか英語なら分かるけど現代文でお前・・・。次で合格点取れなかったらまた親に来てもらうことになるから、しっかり勉強して来いよ、いいな?」

 はい。力なく立ち上がり職員室を後にする。
 1年生の時同じ理由で先生に呼び出されたお母さんはひたすら先生に平謝りしてから「このバカ娘!」つって私の頭を小突いたなぁ。いやはや懐かしや。
 しかし今度はそうもいかない。
 先生だって2度もウチの親にこんな不本意な形で会いたくないだろうし、私だって会わせたくはない。

 秋芳先生は私と付き合っているからと言ってテスト前に問題を横流ししてくれるとか点数をオマケしてくれる、なんてことは一切ない。
 先生はそこらへんは公私混同しないタイプだ。

 こんなことなら公私混同するタイプの男がよかった、と自己中極まりないことを思ってしまったが、すぐに先生から「合格点取れたら泊まりに来いよ。一晩中ヒーヒー言わせてやるから♡大好きだぞ♡」などというメールが届いたもんで、一晩中ヒーヒーという最大の恐怖は差し置いてひとまずスキップしながら学校を後にした。
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