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泡のように
第38章 37.
 だぶだぶのセーターはユニクロのXLメンズもの。
 色をチャコールグレーにしたのは単純に卒業後は先生の部屋着にしようと考えただけのことで、ウールは伸びるからXLが微妙にキツイ先生でも問題ないだろうって浅はかに考えて買った。
 期間限定価格の1480円。
 まさか伸びない脇の部分がキツイだなんて。
 盲点極まりない痛恨のミスだなと思った。


 卒業式は青天の霹靂。
 婚姻届の保証人欄は私のだけ空欄のまま。
 先生は妹さんに書いてもらったそうだ。
 先生と同じ血筋であることが伺える、活字のような字。
 それとまるきり同じ字で宛先が書かれたダンボールの中にはダウニー臭いベビー服のほかに、スマホくらいの厚さの封筒も同封されてた。

「こんなのいらねーのになぁ。いくら妹ったって、2度もこんなして祝いもらうのは気が引けるよ。3度目は絶対ないって誓わねぇとな。あーあ、チカの入学式のときまるっと返すしかねぇな」

 そう言って先生は預金通帳に封筒のままそれを挟んでいた。
 妹さんは、2度目の結婚をしようとしている兄貴に対し、どんな感情を抱いたのだろう。
 
 目指す場所は同じなのに、先生とは別々に家を出る。
 ダッフルコートの前はもう締まらない。
 セーターなんかで隠せるレベルではないのだが、隠すつもりもないという体でいるよりは、こうしたほうがマシだろう。



 掃除しても掃除してもどうだっていいエロ本とか漫画本とかピルクルの紙パックとか鼻をかんだティッシュとかが散らかって汚れる校舎に足を踏み入れ、いつもの教室に入る。
 いつの間にか仲直りしていた晴香がグループのやつらと一緒に私に手を振る。
 そして、すでに涙の浮かんだ崩れた化粧の、つけまつげの取れかけた目で、私に、今日で卒業だね寂しくなるね、秋芳智恵子ちゃん。とか言って笑わせてくる。
 一滴の涙すら浮かばないドライアイでありがとうと答えると、後ろから肩を叩かれる。
 いつの間にか秋芳先生と同じくらいの目線にまで背の伸びたキム君が私に、1年のクリスマスのとき言いそびれたけど俺あんたのこと好きだったんだぜ、などと突然すぎる告白をして、センセーショナルにクラス中が色めき立つ。
 私は全然気付かなかったごめん、とやはりドライアイで答え、でも一緒に試合観に行けて楽しかったありがとう、と言ったところで視界が歪んだ。
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