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泡のように
第38章 37.
「だから、もう、逃げたりしないから、今度こそ逃げないから」
遠く視線の先にある先生の、ハの字に情けなく下がった眉毛を見つめながら。
「お願いだから、今度こそ私と、ふつうの兄妹になって」
預金通帳を差し出す。
「15歳だった私にお兄ちゃんがもう終わりにしようって言ったときと同じように。でもお金は受け取れないよ。私のが、重罪だから。むしろ私がゴメンつって金払うべきだよ。なんべんヤラせたんだよって、それこそ風俗だったとしたら300万円ぶんくらいはシテもらったよね。ね?」
頬に涙が伝う。でも笑顔でいようとする。
「さっきのキスで最後にするし。マジで最後だよ。どう謝ったらいいのか分からないけど、本当にごめん」
ぷちん、と弾ける、泡の音を聞きながら。
最後にそう言えたのは、腹の中の子が、私の腹を蹴り上げたせいだったのかも知れない。
「お兄ちゃんは私にとって、お兄ちゃんだよ。それ以上でもそれ以下でもないよ。ほら、私にだって言えたよ。お兄ちゃんみたいに言えたよ。だから、振り向かないよ。私母になったんだから。子供を守るって、言ったでしょ?ね?私ってものすごくえらいでしょ」
ぼろぼろ涙が落ちて、もはや何も見えない。
お兄ちゃんは今、どんな顔をしているんだろう。
「ありがとう。今まで本当にありがとう。大好きだよ。たぶん先生のことをお兄ちゃんより必要だと思うことは絶対にないよ。でも、先生のこと、愛したいから。先生が私を受け入れてくれたように、私も先生を受け入れたいから。だから、元気でね。また、落ち着いたら、会おうね」
遠く視線の先にある先生の、ハの字に情けなく下がった眉毛を見つめながら。
「お願いだから、今度こそ私と、ふつうの兄妹になって」
預金通帳を差し出す。
「15歳だった私にお兄ちゃんがもう終わりにしようって言ったときと同じように。でもお金は受け取れないよ。私のが、重罪だから。むしろ私がゴメンつって金払うべきだよ。なんべんヤラせたんだよって、それこそ風俗だったとしたら300万円ぶんくらいはシテもらったよね。ね?」
頬に涙が伝う。でも笑顔でいようとする。
「さっきのキスで最後にするし。マジで最後だよ。どう謝ったらいいのか分からないけど、本当にごめん」
ぷちん、と弾ける、泡の音を聞きながら。
最後にそう言えたのは、腹の中の子が、私の腹を蹴り上げたせいだったのかも知れない。
「お兄ちゃんは私にとって、お兄ちゃんだよ。それ以上でもそれ以下でもないよ。ほら、私にだって言えたよ。お兄ちゃんみたいに言えたよ。だから、振り向かないよ。私母になったんだから。子供を守るって、言ったでしょ?ね?私ってものすごくえらいでしょ」
ぼろぼろ涙が落ちて、もはや何も見えない。
お兄ちゃんは今、どんな顔をしているんだろう。
「ありがとう。今まで本当にありがとう。大好きだよ。たぶん先生のことをお兄ちゃんより必要だと思うことは絶対にないよ。でも、先生のこと、愛したいから。先生が私を受け入れてくれたように、私も先生を受け入れたいから。だから、元気でね。また、落ち着いたら、会おうね」