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泡のように
第8章 7.
 私が物心ついた頃からお兄ちゃんは基本的にこういう感じの人間だった。基本的に、というのはアメフトをやってる時だけは「しゃぁーーー!張り切って行こうぜぇーーー!」的な水を得た魚的なテンションになっちゃうため、男友達、というか部活仲間からは親しまれていたとは思う。
 まぁ、世界の中心でタッチダウンとさけぶようなアメフト基準の価値観で生きているならば、確かにお兄ちゃんは自己認識通り、小柄なほうかも知れないが。

「そろそろ孫の顔を見たいとは言われてるんだけど、そういうわけで無理だから、母さんには悪いけど、智恵子、よろしくな」
「よろしくって」
「智恵子の彼氏、きっと彼氏は智恵子のこと大好きだと思うよ」

 ぎょっとして今度は私が声に出さずエッ!と言った。お兄ちゃんは久しぶりに私に笑顔を向けた。

「なんで知ってるの?だろ?彼氏がいることくらい、分かるよ。兄貴なんだから、智恵子を見たら、すぐ分かる」

 お兄ちゃんはポテチを食べ終わると今度はコーラ、ゼロでない赤いキャップの2リットルを一気飲みしはじめた。ペットボトルを持つお兄ちゃんの腕は私の太ももより太そうだ。喉がゴキュンゴキュン鳴っている。一口わけてよ、言う前にコーラはすべてお兄ちゃんの胃の中に消えた。

「じ、じゃあ、私が彼氏んちに泊まって一晩中抱かれて、その、その帰りだってのも・・・見たらわかる?」

 お兄ちゃんの口調が移り挙動不審になってしまった。
 お兄ちゃんは唖然とした顔でアメリカのコントみたいな音のゲップをした。
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