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泡のように
第8章 7.
「そ、そんなことまで、にい、に、兄ちゃんに分かるわけないだろ」

 それきり鳶色は私と目を合わせてくれなかった。
 コタツに突っ伏して、雑音にしか聴こえない英語の解説をBGMに目を閉じる。

 昨日は一睡もしていない。
 本当に朝まで、違う意味でヒーヒーだった。
 座ったままだと股間が痛むからキルトのコタツマットの上にゴロンと転がる。
 時計を見上げると、まだ午前9時を回ったところだった。お母さんとおっさんはデートだろうか。もしくは買い出しだろうか。どちらにせよ昼過ぎでないと帰宅しないだろう。

 身体を奥に潜り込ませ、肩までコタツ布団を被る。脚を伸ばすと足の裏にお兄ちゃんのふくらはぎが当たった。

 ねぇ、目を閉じたままお兄ちゃんに声を掛ける。

「私って淫乱だと思う?」

 お兄ちゃんの姿は見えないが、戸惑う姿が目に浮かぶようだ。

「彼氏に言われるの。お前の身体はエロくて淫乱だってさ」

 お兄ちゃんの脚を爪先で撫でる。

「私のせいじゃないのにね」

 脛をびっしり埋め尽くす体毛の質感に甘い快感を覚えながら、返答を得る前に夢の中に落ちた。


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